ナイーブなカナダ軍人へのタフな日本人学者のインタビュー

 「これ以上どんなおぞましいことを伝えることが出来るというのか。灼熱の太陽のなかに立ちこめる死臭…。死人に群がり、死人をむさぼるハエ、ウジ虫、ドブネズミ…。神はいったいどこに行ってしまったのか」―ロメオ・ダレール(元国連平和維持部隊司令官)は、著作『悪魔との握手』で、ルワンダで虐殺を止められない自らへの怒りと、介入を拒みつづける国際社会への憤りを綴っている。そして、その後彼は自責の念から精神障害を患い自殺未遂事件をおこしてしまう。もっとも今では、それを克服しカナダで上院議員を務め、「保護する責任」の考え方を提唱している。

 ダレール氏に対する伊勢崎賢治氏(東京外大教授)を聞き手としたNHK未来への提言シリーズ『戦禍なき時代を築く』を読んだ直後に、党の外交安全保障調査会に伊勢崎さんを講師として招き、話す機会があった。数ある著作のなかでもこの本が一番好きだという。インタビュー仕立てだから彼自身が書いているくだりは少ないのだが。自殺しようとした彼の心の葛藤にショックを受けたむねを私が伝えると、「軍人のくせにナイーブなんですよ」との答えが返ってきた。同じような現場をシェラレオネやアフガンなどで遭遇してきても、けろっとして次々と紛争地を求めて歩いてきた彼とは随分と違う。「全くタフですね、伊勢崎先生は。むしろナイーブな人の方に私は共感を感じますよ」と口走ってしまった。決して嫌味ではない。超人ですねと言いたかったのだ。

 21世紀の平和構築を考え、日本の役割を模索するなかで、実際に地獄の渦中に飛び込んで悪戦苦闘してきた二人の対談は、私たちにとって強い刺激になる。


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